◆染色体異常(均衡型相互転座)における着床前診断について


一般に、自然妊娠の10〜15%が自然流産になるといわれ。3回以上繰り返す流産を『習慣性流産』といいます。
習慣性流産は、免疫や子宮の異常、染色体異常、黄体機能不全、甲状腺機能低下症などで起こりますが、
約10%は父親か母親の染色体異常を原因とします。
染色体異常をもつ受精卵はたとえ着床しても、ほとんどが流産したり死産してしまうのです。


染色体異常には、染色体の一部が入れ替わっている『均衡型相互転座』と呼ばれるタイプのものがあります。
この染色体異常は、染色体の中にある遺伝子情報は全く正常であるため外見的には異常のない方と全く変わり
ありません。しかし、精子や卵子が作られる時に染色体異常を持つものと、持たないものとが発生します。
その中で染色体異常をもつ精子や卵子が受精することで、染色体の一部が欠けた状態(不均衡型)となり、
正常な発育ができなくなり、そのため習慣性流産を引き起こすことになります。


着床前診断は受精卵診断ともいい、体外受精の受精卵を子宮に着床させる前に、染色体や遺伝子に異常が
ないか調べて、より発育可能な受精卵を選ぶ方法です。その選んだ胚を子宮に戻すことによって、流産の危険を
軽減することが可能になります。
この診断法は、1990年に最初の赤ちゃんが海外で誕生しており、現在では多くの健常児が得られており、
医療技術としての歴史は長いのです。私(院長:竹内一浩)は、1989年より米国Jones生殖医学研究所に
留学してこの療法の開発や臨床応用にたずさわってきました。
当時、日本においては認められていませんでしたが、現在では認められるようになり、何度も流産を繰り返す
ご夫婦にとっては朗報といえるものだと思います。



◆着床前診断の流れ

1)体外受精の実施


複数の受精卵(胚)を用いて診断を行うので、体外受精を行なわなければなりません。
女性に排卵誘発剤を使い、卵巣から複数の卵子を取り出す『採卵』を行います。
体外受精を受ける事前に『体外受精説明会』を受講して内容を理解して頂きます。

2)受精卵の診断

培養液の中で採取した卵子と精子を受精させます。このあと、受精卵が4〜8個の細胞に分かれるのですが、その時点でそれぞれの受精卵から1個ずつ細胞を採取します。採取の方法は、胚を固定し、卵の外側にある透明帯と呼ばれる殻に穴を開け、その穴から割球を1個胚の外へ押し出します。
残りの細胞には全く影響を及ぼさないので、その後培養を続けます。
胚盤胞到達率はほとんど変わりありません。



採取した細胞はFISH染色後観察します。正常の場合は染色体のシグナルは2個ずつですが1個少なかったり、逆に1個多かったりすると、不均衡型転座と診断します。正常型と均衡型転座はこのFISH法では区別がつきません。
なので、生まれた子供が保因者となる可能性もあると考えられます。正常か保因者かを確認する場合は、妊娠成立後に絨毛検査および羊水検査にて染色体をより詳しく調べることもできますが、そこまで検査を行うかはあくまでもご夫婦の判断となります。

3)胚移植
検査によって診断された、発育可能な受精卵を子宮内に戻します。
移植後には注射や内服などの黄体補充を数日行います。


4)その他
体外受精および顕微授精・胚移植における妊娠率は一般に約30%程度であり、必ずしも
一回で妊娠に至らない場合もあります。また、子宮外妊娠になる可能性も極めて稀ですが
起こり得ることもあります。